推し作家の売り子、好きが止まらない
1年待った続編です。前作でようやく結ばれた二人、でも「好き」はまだ言えていない。ひびきくんはcono先生のことが好きで好きで、でも大事にしてあげられてない気がして悩んでいる。その不器用な優しさと、先生の側の事情が絡み合って、両片思いの甘さと切なさが同時にくる。エロ漫画で泣いたというレビューを見て「大げさでは」と思う人に、まず読んでほしいです。
「新刊が×××なのは売り子のせいです2」のあらすじ
商業でも活動しながら、こっそり成人向け同人を出し続けているcono先生。性癖は「擦り合い」、性格は感度良好。そのcono先生の本に惚れ込んで、毎回イベントに足を運んでいたひびきくんは、あるきっかけで先生の売り子を任されることになります。前作で身体の相性は証明済みの二人ですが、「好き」という言葉はまだ交わせていない。ひびきくんは前戯が苦痛な先生のことを「自分では大事にしてあげられていないのでは」と密かに思い悩んでいて、その優しい葛藤が関係を一歩進めるきっかけになっていくのですが……
「新刊が×××なのは売り子のせいです2」の読みどころ
シチュエーション
同人誌即売会という舞台が効いています。本を介して繋がった二人、という関係の出発点が常に底に流れていて、ベッドシーンにも「この人の本が好きだった」という感情が乗ってくる。売り子と作家という立ち位置の非対称さが、ひびきくんの一歩踏み出しにくさをちゃんと説明してくれています。
心理描写
ひびきくんの悩みが地味に刺さります。前戯が苦痛なcono先生に対して「彼氏になれない理由には十分じゃないか」と思いながら、好きという気持ちは止まらない。この「好きなのに、うまくしてあげられていない気がする」という焦りと自己不信の揺れが、攻めの心理としてすごく丁寧に書かれています。
絵柄・演出
線が繊細で、特に表情の描き分けがうまい。恍惚と照れが混在している顔、快感に引きずられながらもまだ理性が残っている顔、そういった細かい段階を絵で見せてくれます。断面図や中出し描写はあっさりしすぎず濃すぎず、ストーリーの流れを壊さないバランス感覚があります。
「新刊が×××なのは売り子のせいです2」のストーリー展開
- 序盤
- 前作を踏まえた再出発の空気から始まります。身体の距離は近いのに、言葉の距離はまだ遠い。「好き」を言えないまま一緒にいる二人の関係性を、丁寧に確認しながら読み進める感じです。前作既読推奨ですが、状況説明は自然に補完されています。
- 中盤
- ひびきくんの葛藤が表面に出てくるあたりで、一気に読むのが惜しくなります。前戯の件をめぐって二人の間にある「ちゃんと伝えられていないこと」が輪郭を持ち始め、エロシーンとそれ以外の場面が交互に感情を揺らしてきます。
- 終盤
- 言えなかった言葉が、ようやく着地する気配があります。どう着地するかはここでは言いません。ただ、泣いたというレビューが複数あった理由は、読み終えると分かります。エロ漫画で泣くというのがどういうことか、体験できる終わり方でした。
「新刊が×××なのは売り子のせいです2」が刺さるのはこんな人
- 前作を読んで1年間ひびきくんとcono先生のことを引きずり続けていた人
- 攻めが「好きなのにうまくしてあげられない」と悩む不器用な優しさに弱い人
- エロシーンに感情の機微がちゃんと乗っていないと物足りないと感じる人
「新刊が×××なのは売り子のせいです2」を読んだ感想
前作から1年。ずっと待っていた人には言うまでもないと思いますが、初見の方に一点だけ先に言わせてください。前作から読んでほしいです。この続編は前作の積み上げがあって初めて刺さる作りになっていて、いきなり2から入るのは少しもったいない。
ひびきくんについて話します。黒髪、細マッチョ、アンニュイな目元と敬語。作家であるcono先生のことが好きで好きで、でも売り子という立ち位置から一歩踏み出すことに慎重で、前作では身体の相性は証明されたのに「好き」という言葉はまだ言えていない。この状況、設定として面白いだけじゃなくて、ひびきくんというキャラクターの誠実さとして機能しています。
今作で効いてくるのが、前戯をめぐる話です。前戯が苦痛なcono先生に対して、ひびきくんは「彼氏になれない理由には十分じゃないか」と思っている。好きなのに、大事にしてあげられていない気がする、という焦り。攻めがこういう形で悩む展開、個人的にかなり好みです。雄み全開で攻めてくる場面もあるんですが、そこに至るまでの葛藤があるから、歯止めが効かなくなる瞬間の重みが違います。
cono先生の感度と表情の描かれ方は、この作品の大きな強みです。快感に引きずられながらも表情に照れや戸惑いが残っている、その移り変わりを絵で丁寧に追っています。感度が高いキャラが感じているのを見せるだけの作品は多いですが、この作品は「感じさせられながら何を思っているか」まで顔と体の描写で伝えようとしている。断面図や中出し描写もあり、視覚的な情報量は十分ありますが、過剰になりすぎずストーリーと並走しています。
ユーザーレビューに「エロ漫画で泣いたの初めて」という声が複数あって、読む前は少し身構えていましたが、読み終えてその意味が分かりました。泣かせにきているというより、感情が積み上がっていった先に涙が出てしまう、という構造です。1年分の「早く続き読みたい」が最後に着地するので、待っていた人ほど終盤がくるはずです。
140ページ超で990円という価格は、読み応えに対して十分です。SNS公開を多くする予定のための価格設定とのことで、作者のスタンスも伝わってきます。2.5話も予定されているとのことで、まだこの二人の話が続くらしい。それが今いちばん嬉しい情報でした。
「新刊が×××なのは売り子のせいです2」のよくある質問
Q. 絵柄の系統はどんな感じですか?劇画系は苦手なのですが。
劇画系ではなく、繊細な線の萌え系・アニメ塗りです。少女漫画寄りというよりは、現代のTL・成人向け同人によくある読みやすい絵柄で、表情の描き分けが丁寧なので感情の細かい変化を絵で追いやすいです。
Q. 攻めのキャラクターはどのくらいの強度ですか?強引系か優しい系か気になります。
基本は敬語を使う落ち着いた雰囲気ですが、歯止めが効かなくなって雄み全開になる場面もあります。強引一辺倒ではなく、「好きなのにうまくしてあげられていない」と悩む繊細さも持ち合わせているので、強引系と優しい系のどちらが好きな方にも刺さる要素があります。
Q. 前作を読んでいないと楽しめませんか?
前作既読を強くすすめます。本作は前作のカップルの続編で、関係性の積み上げがあってこそ刺さる作りになっています。2から入っても状況はある程度分かりますが、前作から読んだほうが終盤の感情の着地が全然違います。